祈る思いも、間もなく届いた第二報でむなしく消えた。
事故の一報を受けた時から「内定取り消し」の考えは、Wの脳裏にちらりともかすめ、本人の強い希望で、Wのアルバイトを続け4月、正社員になった。
3カ月後、新入社員に課せられた「経営目的について」というリポートに、彼は次のように書いた。
「命を奪ってしまった友人だと思って、すべてのお客さまを迎えたい。
多くの人に深い悲しみを与えてしまった私だが、これからはWの仕事の中で、多くの人に幸せだなと思ってもらえるようなお手伝いをしたい。
まだ自分の身は安定していないが、私に課せられた使命だと思う」翌98年2月、懲役1年の実刑判決が下った。
その夜、Wは一緒に酒を飲んだ。
「5年後、お前がどれほど成長しているか楽しみにしている。
すぐ復職できるようポストを用意しておくからな」1カ月後、市原の交通刑務所入所。
模範囚となり刑期が4カ月も短縮され同年11月、仮出所。
獄中で商業簿記2級の資格を取った。
復帰後、鎌倉店を経て現在は埼玉県内で店長を務めている。
この事実を語り継いでいこう。
人の死を無駄にしてはならない。
人間性の向上を目指し「人を裏切るな。
何よりも愛する人だけは泣かせるな」が、Wの1999年4月、8人の退職者に支払われるべき従業員持株会の返還金の一部を横領、着服していた総務部員の不正が明るみに出た。
懲戒免職にしたが、年老いた両親を養っている事情を勘案し告訴は見送った。
この時も、社員へのメッセージの中でWは、事件の全容を詳しく明らかにした。
Wには、「できないと言わない」という社訓がある。
実現不可能なことを指示・命令されても、何でも「はい、できます」と答えよう、という意味ではない。
例えば「空を飛べ」と言われたら、「私は人間だから飛べない」と言ってはいけない。
「飛行機を購入する予算と、操縦免許取得の時間をください。
そうすれば飛べます」と答え、という意味の社訓だとWは言う。
ある日、昼の宴会が申し込まれた。
電話を取ったアルバイト店員が、午後5時からの営業時間を理由に断った。
後日、同じ申し込みがあり、今度は店長が応対に出て喜んで引き受けた。
試練の道を行く者に、励ましのエールを送る。
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